福岡の河童伝説を語る上で欠かすことのできない北九州市若松区の
「河童封じの地蔵尊」。火野葦平の短編小説『 石と釘 』により有名になった。
高塔山の言い伝えは以下の通りである。
昔、修多羅と呼ばれる村が高塔山の周辺にあり、その近くの池で馬を
引きずり込もうとした一匹の河童がいた。ところが馬は八馬力、河童は
六馬力と言われているように、逆に馬に引きずられてしまい、庄屋によって
捕らわれてしまう。河童は必死に命請いをした。そこで地蔵の背中に舟釘を
打ち込んで釘のある間はいたずらをしませんと河童に誓わせた…。
別バージョンとも言える、火野葦平の小説には島郷という村が登場する。
小説「石と釘」を要すると以下の通りである。
昔、島郷と修多羅の河童はお互いにいがみ合い、戦を繰り広げていた。
夜遅くまで空中戦が展開され、朝になると戦死した河童の死体がドロドロ
に溶けて田畑に溜まり、強烈な悪臭を放った。何せ乱暴な河童達の所業。
村人達はどうすることもできず、ほとほと手を焼いていた。
ある日、一人の山伏が立ち上がり、石地蔵の前で河童封じの祈祷を始めた。
食事もまともにとらぬようにして来る日も来る日もお祈りを続けた。
河童たちも封じ込まれてなるものかとある時は美女に化けたり、
又ある時はお化けとなって現れたりして、祈祷の邪魔をした。
しかし、山伏はどんな妨害にも決して屈しなかった。何千もの祈祷を
重ねたある日のこと、石地蔵の肌は餅のように柔らかくなり、すかさず
山伏は地蔵の背中に一尺の大釘を打ち込んだ。その瞬間、二つの村の河童
は木の葉のように舞い落ち、地中に閉じ込められた…
現地に伝わる伝承と小説とではかなり内容が異なるのも興味深い。ちなみに
全国放送されていた「まんが日本昔話」では後者のストーリーを採用している。
地蔵尊に幾度か足を運んでいる北九州市民の三日月電波は言う。
高塔山展望台から見る景色は日中も素晴らしいが、お勧めはやはり「夜景」で
あると。「日本夜景遺産」にも認定されており、「河童の隠した宝石箱」と
言われることもあるのだと教えてくれた。
北九州が誇る高塔山の河童封じの地蔵尊と夜景、興味のある方は是非
足を運んでほしい。
Comments